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センテネリアンを目指すヘルシーエイジング学会

 Here, by analyzing global demographic data, we show that improvements in survival with age tend to decline after age 100, and that the age at death of the world's oldest person has not increased since the 1990s. Our results strongly suggest that the maximum lifespan of humans is fixed and subject to natural constraints. (Dong X, Jan Vijg、et al. Nature. 2016 Oct 5)
 アルベルト・アインシュタイン医学校(ニューヨーク市)遺伝学部長のJan Vijg氏らは、ヒトの寿命は、既にほぼ限界点に到達している可能性があり、最高齢の記録が現在の122歳を超えることはおそらくなく、寿命の上限は125歳だろうと述べている。これはHuman Mortality Database というデータベースからの解析に基づく報告で、彼らによると、平均寿命は、1970年代以降、世界最高齢も上昇し、1997年に死亡したJeanne Calmentというフランス女性の122歳が最高寿命記録だという。更に、ある人が125歳に到達する確率は1万分の1未満だとのことだ。これが高いか低いか、よくは分からないが、厚生労働省が2018年7月20日に公表した日本人の簡易生命表によると、2017年の平均寿命は男性、女性それぞれ81.09歳、87.26歳であり、過去最高を更新したことである。100歳を超えた百寿者(センテネリアン)の数も2016年の統計では世界全体で450,000人だったのに対して、わが国は65,692人と、地中海周辺国、北欧についで、長寿地域ということになる。
 平均寿命をみても厚生労働省が2018年7月20に公表した簡易生命表によると、2017年の日本人の平均寿命は男性81.09歳、女性は87.26歳で、世界第3位、過去最高を更新している、我々を取り巻く医療インフラ、医療制度、公衆衛生環境、食習慣、寿命を決定する遺伝学的な背景など、必ずしも満足できる状況にあるわけではないと思うが、少なくとも我々日本人の向上心がそうさせているのかもしれない。ヘルシーエイジングのために必要なことというのは実に様々な側面をもち、実に多面的である。

 この多面的な向上心こそが我がヘルシーエイジング学会の駆動力である。


 
 さて、ヘルシーエイジング学会は平成21年に第1回学術会議が開催され、今年2月に10回という節目の学術会議が開かれました。

 私は平成30年7月4日付けで当ヘルシーエイジング学会が一般社団法人化されるのを契機に創立者の山田明夫先生の後を継ぐことになりました。略歴は文末に纏めた通りでして、ヘルシーエイジングを実践すべく、現役医師として、毎日のように慢性腎臓病はあっても元気にしっかり自分の生涯を全うしたいとのお考えの方々と面談、診察、最善と思われる策を提案させて頂いています。そこにはCKD(慢性腎臓病)による腎機能障害の重症化を予防し、進行を阻止することを目標としたサナカスぺシャルと称したCKD(慢性腎臓病)分子栄養療法なども含まれます。

 CKD(慢性腎臓病)というと、透析療法(血液透析、腹膜透析)、腎移植などの腎代替療法を思い浮かべる方が多いと思います。実際のところ、このような治療法が適切に実施されるよう私自身、日本透析医学会会長、日本透析医会理事をつとめるなど、深く関わってきています。その一方で、私は未だそれらの治療を必要とはしていないが、将来においては必要になる可能性がある方々の腎臓の状態が重症化することを予防し、腎機能障害の進行性悪化を阻止することを目的とした活動を日常的に実行してきています。このような対応が必要な方がわが国では1300万名もおいでになります。

 ここで実感を伴って、推察される問題はこれらの患者さん達の高齢化です。日本透析医学会から毎年、報告されている調査統計によれば、2016年透析療法に導入された患者数は37,250人(男性25,506人、女性11,744人)でした。これらの患者の平均年齢は男性が68.57歳、女性が71.19歳でした。これは、前年と比べそれぞれ0.20 歳、0.24歳と、若干の鈍化はみられますが、毎年ほぼ直線的に上昇しているのです。透析療法導入患者を5歳刻みで層別化すると、最も割合が高い年齢層は男性が65~69歳で、女性は80~84歳です。75歳以上の後期高齢者は女性では47.2%、男性では37.3%にも及んでいるのです。まさに、65歳以上の高齢者人口は3186万人(平成25年9月15日現在推計)で、総人口に占める割合は25.0%という今日の人口動態を反映しています。

 当然、殆ど皆さん全員が動脈硬化症、高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病、心臓疾患、前立腺肥大、認知機能障害、がん、時には心の病など、どれか一つ以上を併発しています。

 従って、私の外来では、文字通り、ヘルシーエイジング、多少問題はあっても軽症で済ませて齢を重ねる、一病息災、二病・・・多病息災にはどうすればよいかということを考えての毎日です。思い倦ねてついつい長時間を割くこともあります。

 患者さんのヘルシーエイジングに向けた日々の臨床での苦闘を学会の活動にどの程度活かせるか、文字通り未知数ですが、皆様のお力を頼りにもがき苦しみながらも前進させて所存ですので、どうぞ宜しくお願いします。

 最後にあらためて、本学会創立時に山田明夫先生が掲げた学会理念を復唱させて頂きます。

 1)高齢者の寝たきりとなる不安の解消。
 2)生き甲斐のある健やかな人生の過ごし方。
 3)高齢者の女性がいつまでも若く、美しく過ごす生き方。
 4)予防医学へ積極的に取り組む 。
 5)会員の啓蒙に役立つ講演会を行う 。
 6)医薬品(内服薬、注射液)などが、その病気に、すぐに役立つ、新しい情報をお知らせする 。
 7)健康食品、サプリメント、漢方薬の西洋医学との融和など新しい情報をお知らせする。
 8)再生医療、移植、人工臓器、医療機器などによる最先端治療をわかりやすく解説する。

略歴

昭和21年10月生まれ
 鳥取大学医学部 (昭和40年入学、昭和46年卒業)
 東京女子医科大学 内科 助手(昭和48年)講師(昭和58年)、助教授(平成2年)、
 教授(平成10年10月東医療センター) (平成23年定年退職)
 California州立大学Davis校 腎臓内科リサーチフェロー
 (Paul F. Gulyassy、Thomas A. Depner)(昭和55年~56年)
 New York州立大学Downstate医療センター 
 腎臓内科客員研究員(Eli A. Friedman)(昭和62年~63年)
 和洋女子大学家政学部健康科学科教授(平成18~20 年)
 東京女子医科大学先端生命医学研究所教授(平成21~23年) 
 日本大学医学部腎内分泌高血圧内科 客員教授(平成21年~平成25年)
 日本腎臓学会腎疾患の食事療法ガイドライン委員会 (平成19年~平成23年)
 日本腎臓学会保険委員長(平成19年~平成25年)
 日本透析医学会理事(平成12年(2000年)6月~平成20年(2008)年6月)
 日本透析医会理事(平成27年~現在に至る)
 国民健康保険事業功績厚生労働大臣表彰(平成28年)
 社会保険診療報酬支払基金関係功績者厚生労働大臣表彰(平成29年)
現職
 
 社会福祉法人仁生社江戸川病院生活習慣病CKDセンター長 (平成23年~現在に至る)

 医療法人靱生会メディカルプラザ篠崎駅西口・市川駅院長(平成23年~現在に至る)

 医療法人刀水会斎藤記念病院名誉院長(平成23年~現在に至る)

 医療法人弘仁会板倉病院サテライトクリニック名誉院長 (平成30年~現在に至る)